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入れ墨で健康診断!?

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日本では、入墨、タトゥーといえば、カタギではない人間の象徴です。海外に行くと、カジュアルに体にお絵かきしている人の多さにびっくりします(あっちにも、ファッション感覚で入れていはならない意匠などもあるようです)。 筆者も留学時代の友達に、ふくらはぎに「ΔG = ΔH – TΔS」といれているやつがいました。とっても優しく知的なナイスガイでした。 筆者はDr. HOUSE というアメリカの医療ドラマが好きでよく見ていましたが、その中で、刑務所の中で劣悪な磁性体の入ったインクを使って模様を入れた患者が、MRIの中でもがき苦しんでいたシーンをよく覚えています。 磁場でインクが発熱して、火であぶられているような苦しみが与えられるらしいです。 これは悪い例ですが、ただのインクではなく、機能を持ったインクを使えばおもろいことができるのでは?というコンセプトの研究が、ドイツの化学誌、Angew. Chem. に出ていました。ベルリン工科大などの研究チームです。 [いま、ページが見られなくなっています。なにかトラブルかも知れませんが、コンセプトが面白いのでそのまま紹介します。] Title: Dermal Tattoo Biosensors for Colorimetric Metabolite Detection Angew. Chem. Int. Ed. 2019 Authors: Dr. Ali K. Yetisen, Rosalia Moreddu, Sarah Seifi, Dr. Nan Jiang, Prof. Katia Vega, Xingchen  Dong, Jie Dong, Prof. Haider Butt, Dr. Martin Jakobi, Prof. Martin Elsner, Prof. Alexander W. Koch https://doi.org/10.1002/anie.201904416 Credit: Willy いきなり、かなりインパクトのあるフィギュアです。みなさんも、小学生のときにBTB溶液でカナダ藻の光合成と呼吸が〜、みたいな実験について学習したかと思いますが、pH、グルコース濃度、アルブミン濃度に応答して色の変わる化合物を体にいれてみました、というお仕事です。

SDDを使った重原子を含む分子の計算

重原子が含まれていると、計算が重たくなるため、重原子の内殻を固定してしまう近似法がよくつかわれることについては、先日も紹介しました。 [ Lanl2DZの使い方 ] ←こちらのほうが、重原子の近似計算について、やや丁寧に記述しています。 このLanl2DZについての記事が、よく読まれているようなので、SDDを使った計算についても、方法を丁寧に紹介しておきたいと思います。 SDDのほうが、ややモダンな方法と言えるでしょうか。SDDで使われる基底関数(トリプルゼータレベル)は、 Lanl2DZで使われるもの(ダブ ルゼータレベル )より高級です。 先行研究などがあり、それと比較したければそちらに合わせるようにしましょう。 (方法は、ほとんど一緒なんですが、初めてやるときはよくわかりませんよね。) 分子内のすべての原子をSDDで計算する場合は、「UB3LYP/SDD」のように、汎関数/基底関数の指定をしてやればOKです。 でも、実際の論文を読むと、みなさん中心金属だけSDDで、あとの有機物部分は他の基底関数を使っている場合が多いですよね。 では、どうやるの?ということで、 例として、Fe(IV)(O)(NH3)5 について、汎関数をb3lyp、基底関数については鉄をSDDで、残りの部分を 6-31g+(d)で 計算してみます。 タイトル行(青字)で、汎関数(ここでは ub3lyp )の後ろに「/ genecp 」と入っています。普段は基底関数(6-31gとか)の指定が来ますが、基底関数をいじりますよ〜(gen)と、擬ポテンシャルを置きますよ〜(ecp)という宣言が入ります。 その後、赤字で鉄の基底関数がSDDで使われる標準的なもの で、N,O,Hには、 6-31g+(d)をつかってくれ、という指定をしています。 一行開けて、オレンジの部分は、鉄に擬ポテンシャル、SDDをおいてくれ、という司令になっています。 無事に計算が収束するといいですね! _____________ %chk=ironoxoSDD.chk # opt=tight ub3lyp/genecp geom=connectivity int=fine Title Card Required 2 3  Fe                -0.00737500

VNCで見ている画面と自分のマシンの間でのコピー&ペースト

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VNCについての備忘録、3つ目です。 [ VNCサーバー設定の備忘録 ] [ VNCはとても便利! ] VNCでつないでいるコンピュータ上の情報を、自分のマシンに持ってこようと思うとテキストとして保存してftpとかできますが、めんどくさすぎます。 そんなときに便利なのが、VNC viewerを介したクリップボードの共有です。 VNCで立ち上げている相手側のマシン上のターミナルに、 「vncconfig」と打ち込むだけです。 これを走らせると、ターミナルが vncconfig に専有されているような状況になるので、他のプログラムを同時に走らせて置きたいときは、「vncconfig &」としましょう。 「&」は、バックグラウンドで走りなさい!という意味です。 参考:Linuxコマンドブックビギナーズ また、vncconfigが走っているよ〜という画面が立ち上がりますが、これがうざい場合、 「-nowin」を間に挟めばポップアップ画面が出ないようです。 英語ですが、オプションコマンドなどの一覧のリンクは こちら 。

Natural Bond Orbital (NBO) Analysis, 自然軌道解析をやってみる

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中心金属と配位子の間の結合次数が知りたい! しかし、量子化学計算結果を見ても、分子軌道として表示されているので個別のM–L相互作用についてはあんまり良くわかりません。 こんなときに、実験化学者を助けてくれるのが、NBOです。 [Fe(IV)(O)(NH3)5]2+ 錯体 (a) と、そのFe–O間のπ結合に相当するMO (b) と, NBO (c) MOでは、アンモニアにまで軌道が染み出しているのに対し、NBOではそのような染み出しができる限り抑えられており、鉄中心と酸素配位子の間の電子密度に焦点があたっているのがわかる。 名城大、永田先生が、メタンを例に わかりやすい図 を示されています。 これを見て、なんのこっちゃ?という人は、無機化学の教科書の分子軌道や、対称適合線形結合のところを勉強しましょう。[ハウスクロフト無機化学が、まだ割とわかりやすいように思います。] Wisconsin大Madison校、フランク・ワインホルド博士が1980年代に開発した手法で、彼のNBOについての総説は2019年現在、むちゃくちゃ 引用 されています。 この総説 を参考にざっくりと説明すると、NBO解析の手順は以下のとおりです。 0. まず、分子軌道をいつもどおりに計算します。 1. 続いて、得られた分子軌道を構成する原子軌道を切り出します。ここで、それぞれの原子軌道は、直行関係をもつように計算されています。 2. 更に、有機化学の教科書にあるような形で混成させることで、   自然混成軌道(NHO)を作ります。(sp3混成ってやりましたよね。あれです。) 3. 最後にこれらを線形結合させることで、2原子間の結合をシンプルに(あるいは我々の結合の見立てと合致する形で)記述する 自然結合軌道(NBO)を生成します。 一旦、たくさんの関数の足し合わせとして求まった分子軌道を、再び原子軌道 へと切り分けるところが、解析手法のミソ 。 良く分からなければ、とりあえず結合論で学習する、混成軌道を利用した分子の組み立てをやっていると考えれば良いと思います。 原子軌道 → 自然原子軌道(NAO) → 自然混成軌道(NHO) →自然結合軌道(NBO) → 自然局在化分子軌道(NLMO)→ 分子軌道 の順に、原子軌道がミキシングされて行きま

SignalsNotebook、サファリのプラグイン

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Chemdrawで有名な、PerkinElmer 社はオンラインで共有することのできるE-Notebookサービス、SignalsNotebookというサービスを走らせています。 参考 http://informatics.perkinelmer.co.jp/products/signals.html 所属機関が契約していて、せっかくなのでポチポチ使ってい見ています。 キーワードに加え、 構造式でも 検索が書けられることは大きな魅力です。 ラボで共有を進めれば、過去のメンバーが作ったレシピが見られて、大変良いようです。 (といっても、弊所では私しか使っていませんが。) ノートはこんな感じ。反応式を打ち込むと、ソッコーで化合物名やフォーミュラがのったテーブルを生成します。ここに、使った試薬の重さ(体積)などを打ち込むと、勝手にモル計算をしてくれます! 生成物の重さから、収率計算なんかも自動でやってくれます。 ちなみに、検索のときに、収率が80%以上の反応、などのクエリを使うこともできる。 完全にSignalsNotebookに移行しているわけではないので、デスクトップのChemDrawと行き来する必要があるのですが、それにはサファリのプラグインを入れる必要があります。 その際のティップスを、書き留めておきます。 1. 反応式の左下に、緑色のクリップボードマークがあります。はじめは、これは灰色です。これをクリックすると、プラグイン「ChemDraw Web Clipboad」のダウンロードを進めてきます。 2. ダウンロードされたdmgファイルを展開し、促されるまま、アプリケーションフォルダにプログラムをアプリケーションフォルダに保存します。 3.  これをダブルクリックすると、Safariの許可を求めてくるので、サファリの環境設定から、拡張機能を選び、ChemDraw Web Clipboadのチェックボックスをアクティベートしてください(下図参照)。 これで、サファリを立ち上げ直すと、SignalsNotebookとデスクトップのChemDraw上で、構造式、反応式の、「Copy&Paste」のやり取りができるようになります。 おためしあれ。