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リガクの古いX線回折測定装置で取得したデータをOlex2で解析するときに

RAPIDを使っている、というマイノリティ(?)向けの記事です。 先日、なんとかinsを作る手順をしめしましたが、もうちょっと楽にやれます。 いろいろと問題があって苦労したので、情報共有。 まず、RAPID-AUTOを最新版にしましょう。 FS-Scale後に、Olex2対応のファイルが入った [Structure] という名前のフォルダが生成されるようになります。 中身は  shelx.hkl、shelx.p4p です。 回折装置からはshelx.hkl、shelx.p4pと、texray.inf の3種を持ち帰りましょう。測定温度はメモ。 Olex2の File→Open から、目的のshelx.hklを選択すれば、処理が始まります。 はじめに、空間群などの決定を行います。この操作で、XXX_trans.hkl、XXX_trans.ins が生成します。 あとは、どこぞのマニュアル通りです。 解析し終わって、もうひと難関。 最後にCIFを作るとき、反射角の情報などが自動ではいりません。(CrysAlisProであれば、自動で入る!) 以下の内容をやっていないと、CIF Checkでひっかかるぞ。 Olexのインターフェイスで以下を打ち込みましょう。 Abs Type: 外形補正をしてなければ [multi-scan] を選択 Abs Details: [ABSCOR (Rigaku, 1995)] と手打ち。 Abs T max: と、Abs T min:  おなじみ、texray.inf ファイルを開き、ABSMIN,ABSMAXの後ろの数字を打ち込んで下さい。 Marge Cif へすすむとCifが出てきます。ここにも足りてない情報があるのでtexrayから補完してあげましょう。 _cell_measurement_reflns_used:  CELNUM の値を打ち込む _cell_measurement_theta_max:  CELMAX の値を打ち込む _cell_measurement_theta_min  :  CELMIN の値を打ち込む 測定温度も空欄になってたかな?記入しときましょう! 現場からは以上です!

DFTの分散力補正

DFT計算は、簡便に"ある程度"正しい分子の電子状態を見積もることができるので、私のような末端計算化学ユーザーに頻用される計算手法です。 そのなかでもよく使われるのが、B3LYPを汎関数とするものでしょう。 しかし弱点も多くあり、その中のひとつが長距離間ではたらく相互作用を見積もれないというものです。そもそも、それを記述するような項が汎関数に含まれていない、ということだそうです。( ここの一ページ目が分かりやすい ) π-π相互作用なんかが大事な場合は当然このままでは困ったことになりますし、水素結合について見積もる場合にも分散力は大事です。 これを解決する手段として、長距離補正項をもたせた汎関数というのが開発されてきました。。 その中の1つ、分散力補正項を汎関数に入れたいときの記述方法を、書き記しておきます。 EmpiricalDispersion=XXX このようなキーワードをインプットファイルに記入します。 XXXには、FD、GD3、GD3BJ が入ります。 それぞれ Petersson-Frisch 分散力、Grimme の D3 分散力、および、D3BJ 分散力モデルが使えます。 下に、直近の計算で使ったインプットの例を載せておきます。 # opt=tight freq=raman upbepbe/def2TZVP EmpiricalDispersion=GD3BJ geom=connectivity Int=ultrafine なかなか見つからなかったのですが、ヒューリンクスのGaussian16の販売促進ページに新しい機能として紹介されていましたが、ウチの09でも、GD3BJは利用可能でした。(他、ためしてません!) 共同研究をしている理論屋さんは、 計算コストがあんまりかからないのに 、結果が格段によくなるからグリンメさん、半端ないっておっしゃってました。 僕のやってる系は、二分子が会合したような構造なので、これを入れたほうが良いようでした。フェニル基がぶつかったりしている系を触っているかたは是非、いれときましょう! 追記、以下のページでも説明されて います。G09でも、一般的な汎関数についてはサポートされているようです。 コンフレックス上に上げられているマニュアル http:/

shelxでの解析に用いるinsファイルの作成

RAPID-AUTOを更新したら、大部分自動化できるみたいです。 (18/05/30  記事作成 ) 先日、古い解析プログラムから新しいプログラムに乗り換えたということを書きましたが、その過程で必要になった、shelx以外で解析したファイルから、再びshelxで精密化し直す際に必要になった情報を、メモしておきます。 shelxは、XXX.insという、入力ファイルとXXX.hklという、反射点のデータを基に、精密化を進めていきます。 Rigakuの機器であれば、反射測定の後、解析すると生成する各種ファイルの中に、shelx.hklというファイルが生成しているはずです。 insの方は、SIRで初期構造を求めるとsir.insのような形で出てくるようです。 自分で作成することもできるみたいです。 insファイルは、A. 結晶の情報(格子定数など)について記述するセクション、B. 精密化の上での条件を記述するセクションと、C. 原子の番号、種類、座標などの書いてあるセクションからなりますが、はじめに最適化を進める上で必要なのは、Aセクションのみのようです。 こちらのページを参考にしました → http://chemistry.bd.psu.edu/jircitano/13shelx.pdf 具体的には以下の通りです。 ___(例始まり)___ TITL Au(DPK)Cl2 Cl in P2(1)/n CELL 0.71073 9.200 12.228 12.585 90.00 95.58 90.00 ZERR 4.00 0.002 0.002 0.003 0.00 0.02 0.00 LATT 1 SYMM .5-X, .5+Y, .5-Z SFAC C H N O CL AU UNIT 44 40 8 8 12 4 HKLF 4 ___(例終わり)___ それぞれの行についての解説です。 TITL :タイトルです。化合物名の後ろに、空間群を記述する。空間群は後から変えられる。 CELL :X線の波長の情報の後に、格子の情報を入れる。(Å単位、° 単位) ZERR :格子の中に、何単位はいっているか(Z)の後に、格子定数の誤差の値を入れます。 LATT :格子のタイプを数字で入力。規則は以下の通り 1=P,

Olex2へのshelxのインストール

我々の研究室では単結晶X線構造解析を、リガクのCrystalstructureでやっていましたが、Olex2( 配布元 )という結晶構造解析ソフトの評判がよく、Crystalstructureがwindows10のアップデートで動かなくなってしまったことを契機に乗り換えることとしました。 初期構造を求めたり、構造のリファインメントを行うためのプログラムははじめから入っているのですが、そこはやはりShelxを使いたい、ということなんですが、環境変数を変えたりする必要があったので、調べたことを備忘録しておきたいと思います(参考:http://xray.chem.wisc.edu/Resources/Manuals/Ilia_Guzei_notes_on_OLEX2.pdf) 1. shelxのファイルをダウンロード(http://shelx.uni-goettingen.de/download.php) このページの"download"から、shelxTやshelxS、shelxLはゲットできるのですが、その前にユーザー登録が必要です。(このあたりのことは、調べると色んな所に出ているので割愛。とはいえ、http://shelx.uni-goettingen.de/register.phpにアクセスし、名前とか入力するだけですが。ここで聞かれるXtal questionは、業界内の人同士であれば盛り上がれるネタですね。 ) 2. ダウンロードしたshelxTなどのファイルを"SAXI"というファイルの中にいれ、Cドライブ直下に置く。パスが右のようになっていればオッケー  C:\SAXI\ たぶん、フォルダ名はSAXIでなくとも良いと思います。 3. 環境変数をいじって、Olexがshelxのプログラムにアクセスできるようにする。 [shelxが、hklデータから結晶構造を求めてゆくプログラムなのに対して、Olexはグラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)です。入力ファイルをテキストエディタで作ってから、コマンドプロンプト(win)やターミナル(mac)からshelxに放り込んで、構造解析をさせることも出来ますが、現代っ子にはちょっときつい。そこで、直感的にマウス操作で入力ファイルを作れるようにしているのが