Intermediate or Transition State
そこで経由しているのは「中間体」か「遷移状態」か。 非常に悩ましい問題である。キャッチできればもちろん、中間体と呼んで差し支えないが、そんな安定なものばかりではない。 そもそもその違いとはなんなのか、明快な定義を与えている本に出会った。 それによれば、中間体と呼ぶからには少なくとも1振動以上の寿命をもつ必要がある。 例えばN–H 振動の赤外スペクトルの波数 v は、 3600 cm-1 (360000 m-1) 程度。 つまり、そのタイムスケールで振動する電磁波と同じタイムスケールの振動をしている。 光速 c : 3.0*10^8 (m/s) として1振動にかかる時間を概算してみる。 c * v で、一秒間に何回振動するかが求まる。一回振動するのに必要な時間はその逆数なので、 (cν)^-1 = [ (3.0*10^8 [m s-1])*(3.6*10^5 [m-1]) ] -1 ~ 10^-14 [s] となるため、 10 fs ( フェムト秒 )程度以上 の寿命があれば、中間体と呼んでもよいことになる。 ( 「最も単純な有機化学」奥山格 著 丸善株式会社 )