DFTの分散力補正

DFT計算は、簡便に"ある程度"正しい分子の電子状態を見積もることができるので、私のような末端計算化学ユーザーに頻用される計算手法です。
そのなかでもよく使われるのが、B3LYPを汎関数とするものでしょう。

しかし弱点も多くあり、その中のひとつが長距離間ではたらく相互作用を見積もれないというものです。そもそも、それを記述するような項が汎関数に含まれていない、ということだそうです。(ここの一ページ目が分かりやすい

π-π相互作用なんかが大事な場合は当然このままでは困ったことになりますし、水素結合について見積もる場合にも分散力は大事です。 これを解決する手段として、長距離補正項をもたせた汎関数というのが開発されてきました。。
その中の1つ、分散力補正項を汎関数に入れたいときの記述方法を、書き記しておきます。

EmpiricalDispersion=XXX

このようなキーワードをインプットファイルに記入します。
XXXには、FD、GD3、GD3BJ が入ります。
それぞれ Petersson-Frisch 分散力、Grimme の D3 分散力、および、D3BJ 分散力モデルが使えます。

下に、直近の計算で使ったインプットの例を載せておきます。

# opt=tight freq=raman upbepbe/def2TZVP EmpiricalDispersion=GD3BJ geom=connectivity Int=ultrafine


なかなか見つからなかったのですが、ヒューリンクスのGaussian16の販売促進ページに新しい機能として紹介されていましたが、ウチの09でも、GD3BJは利用可能でした。(他、ためしてません!)
共同研究をしている理論屋さんは、計算コストがあんまりかからないのに、結果が格段によくなるからグリンメさん、半端ないっておっしゃってました。
僕のやってる系は、二分子が会合したような構造なので、これを入れたほうが良いようでした。フェニル基がぶつかったりしている系を触っているかたは是非、いれときましょう!

追記、以下のページでも説明されています。G09でも、一般的な汎関数についてはサポートされているようです。

コンフレックス上に上げられているマニュアル
http://www.conflex.co.jp/gaussian_support/dft.html

Dr. Yu, Jen-Shiang K.のページ
http://wild.life.nctu.edu.tw/~jsyu/compchem/g09/g09ur/k_dft.htm

ユーチューバーが、理論背景についてもう少し丁寧に解説してくれています。
https://www.youtube.com/watch?v=Ow6EfkImXQc

文献
Adamo, C.; Barone, V. J. Chem. Phys. 1999, 110, 6158–6170
Grimme, S.; Antony, J.; Ehrlich, S.; Krieg, H. J. Chem. Phys. 2010, 132, 154104
Grimme, S.; Ehrlich, S.; Goerigk, L. J. Comput. Chem. 2011, 32, 1456–1465

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